固定資産台帳・財務書類の作成状況は？（令和4年3月31日時点）

統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査

総務省ホームページにおいて「統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査（令和4年3月31日時点）」が公表されました。今回はその調査結果について考察します。

なお、調査結果は以下の総務省のホームページ内「財務書類等の作成状況」に格納されています。

【参照】
・総務省ホームページ「地方公会計の整備」（外部サイト）

（1）固定資産台帳の整備（更新）状況

令和4年3月31日時点における令和3年3月31日時点の状況を反映した固定資産台帳の整備（更新）状況は、以下の通りです。

出典：総務省「統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査（令和4年3月31日時点）」）

一方、同じく1年前の令和2年3月31日時点における固定資産台帳の整備（更新）状況は、以下の通りでした。

出典：総務省「統一的な基準による財務書類の整備状況等調査（令和3年3月31日時点）

都道府県及び市区町村ともに、1年前よりも整備（更新）済の自治体の割合が増加しています。

作成状況調査で作成状況が公表されること等も含め、決算年度の翌年度末までに作成しなければならないという自治体の意識の高まりのほか、総務省と地方公共団体金融機構の共同事業である「経営・財務マネジメント強化事業」の活用により、固定資産台帳の整備（更新）がよりスムーズに行えるようになったことも要因の1つと考えられます。

一方で翌年度末までに完成しない団体も一定数見られます。

この点、地方公会計の推進に関する研究会（令和元年度）報告書（以下、「報告書」）3ページにおいて、以下の理由により更新作業に時間を要していることがうかがえると述べられています。

• 更新の方法に関しては、随時更新を行っている団体は1割程度で、残りの多くの団体が年度末に一括更新を行っている状況である
• 一括更新の団体では、翌年度の7月以降に更新作業を行う団体が8割程度を占め、とりまとめ作業に3ヶ月以上要する団体が6割以上となっている

以下の理由により更新作業に時間を要していることがうかがえると述べられています。

7月以降に更新作業を行い、とりまとめ作業に3ヶ月以上を要するとすでに10月になってしまいます。固定資産台帳の更新が終わらないと財務書類は完成しないため、完成した財務書類等のデータを次年度予算に活用することは時期的に難しくなってきます。また、財務書類作成を財政担当部署が担っている場合、次年度予算編成作業が迫ってくるため、さらに財務書類の作成は遅くなりがちです。

次年度予算編成に完成した財務書類を活用するとして、固定資産台帳の更新を遅くとも8月末までに終わるスケジュールを考えると、決算統計作業が終わる7月頃からすべての作業をスタートするのでは厳しく、もっと早い段階で作業を開始しておく必要があると考えられます。

固定資産台帳更新の早期化に関しては、「報告書」にも紹介されているほか、トーマツの以下の記事でも紹介していますのでご参照ください。

【関連記事】
・【公会計特集】固定資産台帳の更新に関する提言内容の解説
・【公会計特集】固定資産台帳の更新3つのポイント

また固定資産台帳更新の早期化検討にあたり、上記にて紹介した総務省と地方公共団体金融機構の共同事業である「経営・財務マネジメント強化事業」を活用することも有用と考えられます。

【関連記事】
・経営・財務マネジメント強化事業（令和4年度）

（2）一般会計等財務書類の作成状況

令和4年３月31日時点における令和2年度決算に係る一般会計等財務書類の作成状況は、以下の通りです。

出典：総務省「統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査（令和4年3月31日時点）」

一方、同じく1年前の令和3年3月31日時点における令和元年度決算に係る一般会計等財務書類の作成状況は、以下の通りでした。

出典：総務省「統一的な基準による財務書類の整備状況等調査（令和3年3月31日時点）」

都道府県及び市区町村ともに、作成済みの自治体が増加しています。
固定資産台帳の整備（更新）と同様に、作成状況調査で作成状況が公表されることから、決算年度の翌年度末までに作成しなければならないという自治体の意識の高まりのほか、総務省と地方公共団体金融機構の共同事業である「経営・財務マネジメント強化事業」の活用により、財務書類の作成がよりスムーズに行えるようになったことも要因の１つと考えられます。

一方で、作成中あるいは未着手の団体も一定数あり、翌年度末までに完成しない団体が一定数見られる状況が依然としてあります。

また、作成済みの団体についてもが統一的な基準による財務書類の導入から一定程度年数が経過し、次のような課題が生じてきています。

• 当初導入に携わった職員の異動等により、導入時に得られたノウハウが後任に引き継がれない
  

• マニュアル化が進められておらず、作業効率化が進められていない

• 公会計業務以外の業務負担の増加

様々な要因により今後作成が滞る可能性もあるため、財務書類作成の効率化が必要です。

効率化については、「報告書」でも記載されているほか、トーマツの以下の記事でも紹介していますのでご参照ください。

【関連記事】
・【公会計特集】財務書類の作成に関する提言内容の解説
・【公会計特集】財務書類作成を効率化する3つの工夫

また固定資産台帳更新の早期化検討と同様に一般会計財務書類作成にあたっても、「経営・財務マネジメント強化事業」を活用することも有用と考えられます。

【関連記事】
・経営・財務マネジメント強化事業（令和4年度）

（3）全体・連結財務書類の作成状況

令和4年３月31日時点における令和2年度決算に係る全体財務書類（財務4表）、連結財務書類（財務4表）の作成状況は、以下の通りです。

出典：総務省「統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査（令和4年3月31日時点）」

一方、同じく1年前の令和3年3月31日時点における令和元年度決算に係る全体財務書類（財務4表）、連結財務書類（財務4表）の作成状況は、以下の通りでした。

出典：総務省「統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査（令和3年3月31日時点）」

一般会計財務書類と同様に作成済みの自治体が増加している傾向にありますが、依然として、一般会計等財務書類より全体・連結財務書類の方が、作成中・未着手の割合が大きくなっている状況があります。

理由としては、「報告書」17ページに記載の通り、地方公会計の「担当者数は１人という団体が多くなっている上、当該担当者は地方公会計以外の他の業務も兼務している場合が多い状況」で、特に小規模団体において、全体・連結財務書類作成にまで手が回っていないことが想定されます。

特に連結においては一般会計等と異なり、連結対象団体の決算書を読替えて取り込む作業が中心となります。連結対象団体の決算書の形は毎年大きく変わるわけではなく、読替え自体はある程度ルーティーンで実施できる作業ですので、必要な連結作業の内容やその工数をあらかじめ整理し、計画的に作業を行うことで、連結財務書類の作成を早期化していくことが可能と考えられます。

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