Posted: 08 Dec. 2020 3 min. read

第19回 グローバル内部通報制度の機能と担当部門~その2~

連載:内部通報制度の有効性を高めるために

前第18回は内部通報の機能のうち「受付・評価」についてお話ししました。今回は、「調査」、「保護」、「確認」のプロセスとその担当部門について議論していきます。


調査

通報内容が事実か否か、影響範囲はどの程度か、手口はどのようなものかといったことを明らかにしていく不正調査については、デロイトの専門家によると「このテーマだけで一冊の本が書ける」とのことです。本連載ではごく基本的な原則について述べるにとどめます。

影響度が“高”の場合は、不正行為が発生した組織のコンプライアンス部門や内部監査部門ではなく、本社の内部監査部門や場合によっては弁護士・公認会計士といった外部の専門家を交えて調査体制を組む必要が生じます。調査は日本の本社主導で行うべきですが、調査体制の中に、不正行為が発生したグループ会社の所在国の外部専門家を含めることが望ましいケースもあるでしょう。前回でも触れたとおり、この調査体制の準備は危機管理体制が発動した場合の調査体制の準備と整合させておく必要があると考えます。

影響度が“低”の場合は、コンプライアンス部門が調査を担うことも可能でしょう。ただし、日本の本社が現地で詳細な調査を行うことには様々な制約が生じます。通報者や関係者の保護、記録の確保と保全に注意したうえで、不正行為が発生した組織のコンプライアンス部門や内部監査部門(以下「CP部門」)に調査作業を依頼する方法も念頭に入れておいた方がよいでしょう。

また、調査担当者の未熟や事前準備の不十分さによって、通報者が露呈し不利益取扱のきっかけとなってしまってはいけません。調査は“保護”の機能とも密接に連携して進める必要があります。


保護

不正行為の主体者による不利益取扱から通報者および調査協力者を保護することは内部通報制度の使命です。過去に実際に起こった不利益取扱のほとんどが、異動、減給および降格などの人事分野の行為で行われてきたため、保護の主体的な担当部門は、それらを抑制することが可能な人事部門が担うべきでしょう。

また、通報の事実が確認されるまでは、被通報者にも根拠のない嫌疑がかけられたり中傷されることがあってはなりません。通報者だけでなく被通報者も保護の対象とすべきです。

さらに、保護は通報の“受付”から“終結”までの間に継続的に担保されるべきであり、終結後であってもなんらかの手当てが必要なケースもあります。一時的な機能とはとらえず継続的に機能するよう注意しておかなくてはいけません。

影響度が“高”の場合は、人事部門を実働部隊として委員会が通報者を含む関係者の保護の責務を担ったほうがよいでしょう。

影響度が“低”の場合は、コンプライアンス部門が人事部門と連携して保護を担うことが考えられます。


確認

通報対応には一定の期間がかかります。その間状況は刻々と変化するため、収集された新たな情報を確認するために、あるいは不利益取扱が行われていないかを確認するために、または通報者がフィードバックを求めている場合の対応のために、内部通報制度の運営側と通報者等との間で確実に連絡をとることができる経路を確保しておくことが必要となります。時差や言語の違いを考慮すると確認の経路としてはEメールの利便性が高くなります。通報者等からEメールアドレスを開示してもらい、いつでも連絡をとれるようにしておくことが望ましいでしょう。

“保護”と同様に、この確認の機能も内部通報の“受付”から“終結”まで継続的に実施されるものであり、場合によっては終結後も連絡経路を確保しておく必要があります。

影響度が“高”の場合は、コンプライアンス部門を実働部隊として委員会が通報者および調査協力者との連絡を管理する方法がよいでしょう。機微な情報の交換や翻訳を伴う場合は、外部の弁護士や事業者などの専門家を経由させることで、通報者等に安心感を与えられるようにすることも検討すべきです。

影響度が“低”の場合は、コンプライアンス部門がこの機能を担うことが考えられます。

 

次回も、今回に引き続きグローバル内部通報制度の機能と担当部門についてお話しします。

 

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執筆者

亀井 将博/Masahiro Kamei

亀井 将博/Masahiro Kamei

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 シニアマネジャー

内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事 ISO/TC309 37002(Whistleblowing)日本代表兼国内委員会委員、元内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会委員 金融機関、自動車関連、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業など業種業態規模を問わず内部通報の外部窓口サービスの提供、および内部通報制度構築を支援 その他、リスクマネジメント体制構築支援、J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験 外部セミナー、インハウスセミナー講師を始め内部通法制度に関する寄稿記事の執筆多数。主な著書 「統制環境読本」(翔泳社、共著)、「攻めと守りのブランド経営戦略」(税務経理協会、共著)等

和田 皇輝/Koki Wada

和田 皇輝/Koki Wada

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 マネジャー

J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験 2010年より内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事 金融機関、自動車関連、建設業、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業、ITなど業種業態規模を問わず企業の対応を支援 現在インハウスセミナー講師を始め内部通法制度構築助言や通報対応業務、ソーシャルメディア関連助言業務を担当 主な執筆 電気評論(寄稿)、「炎上リスク」に備えるWebモニタリングのすすめ方(共著)、マンガ 銀行員のためのSNS利用ルール(共著)