第2回 内部通報制度設置の目的と機能 ブックマークが追加されました
第1回では日本企業の内部通報制度の設置状況を様々な調査から紐解きました。内部通報制度の設置は進んでおり、とくに業種を問わず従業員規模の大きな組織では内部通報制度は深く浸透しているようです。
では、実際に内部通報制度に不正行為は通報されるものなのでしょうか。図表2は2019年の一定期間内に、不正行為が内部通報されたという趣旨の記載がある報道例の一覧です。少なくとも図表2に記載された数の報道があったということは、内部通報制度は不正の検知に対して一定の効果を発揮しているということなのでしょう。
図表2:2019年に不正行為が内部通報されたと記載のある報道例
日本企業の内部通報制度の導入は進んでおり、一定の効果を発揮しているという状況は把握できましたが、あらためて組織が内部通報制度を整備し運用する目的を整理したいと思います。その目的は概ね以下の2点で示すことができるのではないでしょうか。
しかし、日本企業のみならず世界的に見ても、組織が運営する内部通報制度には、以下の目的が付加されている場合が多いと思います。
どのようなシステムであっても、そのシステムに与えられた目的によって求められる機能は異なるはずです。たとえば、目的が不正の抑止(発見)であれば、受付チャネルに求められる機能は確実に記録可能な媒体となり、対応言語を管理職層が利用する言語に絞り込むことも可能でしょう。一方で目的が相談である場合は、電話を主体とした多様な媒体を用意して相談者の生の声で発する苦悩に耳を傾け、相談者が口を開きやすくした方がよいでしょうし、言語は組織の要員が使用する全言語をそろえておくのが理想となるでしょう。どのような組織にもそこで働く人たちに何らかの不満や悩みはあるはずです。そしてその不満や悩みは、たとえ組織にとっては大したことではなくても、相談者にとってはその時点で人生最大の苦悩なのでしょう。そのような相談も受け付けるシステムの受信件数はおそらく従業員数に比例した量になっていくものと推察されます。
よって、呼損のない通信、オペレータおよび相談対応者を対応する言語に応じて複数人配置する必要が生じるのだと思います。
図表3:内部通報制度に求められる機能の目的別整理
つまり、目的を多様にすればするほど最大限を求めることに近づいて、その結果、システムの導入および運用負荷(コスト)も高まることになります。
次回は、2020年6月に成立した公益通報者保護法の改正についてお話しします。
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【連載】内部通報制度の有効性を高めるために
亀井 将博/Masahiro Kamei
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社
内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事。
ISO/TC309 37002(Whistleblowing)日本代表兼国内委員会委員、元内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会委員。
金融機関、自動車関連、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業など業種業態規模を問わず内部通報の外部窓口サービスの提供、および内部通報制度構築を支援。
その他、リスクマネジメント体制構築支援、J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験。
外部セミナー、インハウスセミナー講師を始め内部通法制度に関する寄稿記事の執筆多数。
和田 皇輝/Koki Wada
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社
J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験。
2010年より内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事。
金融機関、自動車関連、建設業、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業、ITなど業種業態規模を問わず企業の対応を支援。
現在インハウスセミナー講師を始め内部通法制度構築助言や通報対応業務、ソーシャルメディア関連助言業務を担当。
※所属などの情報は執筆当時のものです。