第4回 改正公益通報者保護法(前回のつづき)および海外の法規制 ブックマークが追加されました
第3回は2020年公益通報者保護法の改正において、組織がもっとも注意すべき点についてお話ししました。前回触れた注意点以外にも、2022年の施行に備え、図表4に示すような改正公益通報者保護法に対する対策を検討しておくべきでしょう。
図表4 改正公益通報者保護法の対策例[1]
[1] 出典:公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/assets/overview_200615_0001.pdf(PDF,312KB、外部サイト)を参照して作表
不正行為の抑止(発見)という内部通報制度の目的に関連深い法規制や基準は国内外に様々なタイプのものがあります。公益通報者保護法のように統括的な法令で通報者を保護しようとする国の例として日本やEUなどがあります。一方で、防止すべき不正行為ごとに制定されたそれぞれの法令中に内部通報に関する条項が存在するタイプの国の例として米国、中国などがあると思います。いずれの国であっても内部通報制度に対する制約を定めた法規制が存在するのであれば、その国に進出した組織の内部通報制度が、それら法規制に抵触しないことを確実にすべきであることは言うまでもありません。
EUでは、加盟各国に内部通報者を保護する国内法の制定を義務付けるEU指令[2](Directive (EU) 2019/1937: the protection of persons who report breaches of Union law)が2019年4月に公開され成立しました。加盟各国は2020年内にもEU指令の理念を踏襲した公益通報者を保護する法令を制定する必要があります。EU指令の概要は以下のようなものです。
EU圏に事業所等が存在する企業では、グローバル内部通報制度を敷設するにあたって、日本の改正公益通報者保護法とEU指令の両方をにらみつつ、自組織の内部通報制度に不備がないかを確認する必要があります。
次回は、「免責」に関係する法規制の例についてお話しします。
[2] Directive (EU) 2019/1937 of the European Parliament and of the Council of 23 October 2019 on the protection of persons who report breaches of Union law:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32019L1937
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デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社
内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事。
ISO/TC309 37002(Whistleblowing)日本代表兼国内委員会委員、元内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会委員。
金融機関、自動車関連、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業など業種業態規模を問わず内部通報の外部窓口サービスの提供、および内部通報制度構築を支援。
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和田 皇輝/Koki Wada
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社
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