Posted: 14 Oct. 2020 3 min. read

第4回 改正公益通報者保護法(前回のつづき)および海外の法規制

連載:内部通報制度の有効性を高めるために

第3回は2020年公益通報者保護法の改正において、組織がもっとも注意すべき点についてお話ししました。前回触れた注意点以外にも、2022年の施行に備え、図表4に示すような改正公益通報者保護法に対する対策を検討しておくべきでしょう。

図表4 改正公益通報者保護法の対策例[1]

※画像をクリックすると拡大表示します

[1] 出典:公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/assets/overview_200615_0001.pdf(PDF,312KB、外部サイト)を参照して作表

 

内部通報制度の法規制や基準

不正行為の抑止(発見)という内部通報制度の目的に関連深い法規制や基準は国内外に様々なタイプのものがあります。公益通報者保護法のように統括的な法令で通報者を保護しようとする国の例として日本やEUなどがあります。一方で、防止すべき不正行為ごとに制定されたそれぞれの法令中に内部通報に関する条項が存在するタイプの国の例として米国、中国などがあると思います。いずれの国であっても内部通報制度に対する制約を定めた法規制が存在するのであれば、その国に進出した組織の内部通報制度が、それら法規制に抵触しないことを確実にすべきであることは言うまでもありません。

EUの公益通報者保護指令

EUでは、加盟各国に内部通報者を保護する国内法の制定を義務付けるEU指令[2](Directive (EU) 2019/1937: the protection of persons who report breaches of Union law)が2019年4月に公開され成立しました。加盟各国は2020年内にもEU指令の理念を踏襲した公益通報者を保護する法令を制定する必要があります。EU指令の概要は以下のようなものです。

  • ハラスメント等の通報者個人の被害軽減を要望するような事案は対象とされていない
  • 民間および公共部門の法人に体制整備を義務付ける内容となっているが、必要に応じた労働組合などの「社会的パートナー」との協議が前提となっている
  • 民間企業の場合は、従業員50人以上、もしくは年間事業売上高または年間貸借対照表の合計が1,000万ユーロ以上の企業が対象となる
  • 通報者の個人を特定する情報の守秘性について厳格な管理を求めている
  • 不利益取扱があったと通報者が主張した場合は、それが不利益取扱ではないと立証しなければならないのは企業側としている
  • 被通報者に対する不利益取扱についても禁止の条項がある
  • 通報から3か月以内に通報対応の結果を通報者にフィードバックすることが求められている
  • 所管当局への通報の方法および条件といった情報を労働者が容易に入手できるようにすることを求めている 等

EU圏に事業所等が存在する企業では、グローバル内部通報制度を敷設するにあたって、日本の改正公益通報者保護法とEU指令の両方をにらみつつ、自組織の内部通報制度に不備がないかを確認する必要があります。

 

次回は、「免責」に関係する法規制の例についてお話しします。

 

[2] Directive (EU) 2019/1937 of the European Parliament and of the Council of 23 October 2019 on the protection of persons who report breaches of Union law:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32019L1937

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執筆者

亀井 将博/Masahiro Kamei

亀井 将博/Masahiro Kamei

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 シニアマネジャー

内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事 ISO/TC309 37002(Whistleblowing)日本代表兼国内委員会委員、元内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会委員 金融機関、自動車関連、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業など業種業態規模を問わず内部通報の外部窓口サービスの提供、および内部通報制度構築を支援 その他、リスクマネジメント体制構築支援、J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験 外部セミナー、インハウスセミナー講師を始め内部通法制度に関する寄稿記事の執筆多数。主な著書 「統制環境読本」(翔泳社、共著)、「攻めと守りのブランド経営戦略」(税務経理協会、共著)等

和田 皇輝/Koki Wada

和田 皇輝/Koki Wada

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 マネジャー

J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験 2010年より内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事 金融機関、自動車関連、建設業、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業、ITなど業種業態規模を問わず企業の対応を支援 現在インハウスセミナー講師を始め内部通法制度構築助言や通報対応業務、ソーシャルメディア関連助言業務を担当 主な執筆 電気評論(寄稿)、「炎上リスク」に備えるWebモニタリングのすすめ方(共著)、マンガ 銀行員のためのSNS利用ルール(共著)