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Crunch time XVll -決断の時17
資金配分問題の紐解き
資金配分は数多くの課題が存在しますが、その結び目を紐解き、課題に一つずつ対応していけば、多くのことを得ることができます。具体的な手法と成功事例を用いて、その取組みを解説しています。
なぜ今、資金配分について論じるのか
世界の変化
COVID-19によって企業は資金計画の見直しを強いられることになりました。対応できた企業もありますが、効果的な戦略を持たず、うまく対応できなかった企業も多く存在します。ESG(環境・社会・ガバナンス)に関連するリスクに加えて、「物言う株主」(アクティビスト)の存在により、企業戦略に与える長期的なインパクトを計算に入れることが求められています。
政策に関する問題
行政による新たな税務政策の検討や適用は、資本的支出に対する企業のタックスエクイティの活用方法や早さに大きな影響を与えます。しかし、それは税務の問題に留まりません。これにより、資金配分に新たな課題と可能性が生まれます。
単なる損益を超えて
資金配分とは、単に少ない支出でより多くのリターンを得ることではありません。投資から得られる将来利益を測定し、そのような投資を可能にするキャッシュフローを保持することです。また、組織が変化しても価値を創出し続けられるようにすること、特に社会や環境問題において、ビジネス目的や株主による期待に対して新たな価値創造の方法を模索することを意味します。
競争優位性
資金配分を適切に行うことで、企業は競合他社との差別化を図ることができます。ポートフォリオ上、理論的に実現可能なものと、実際に実現できたものとのギャップを狭めることは極めて有益です。適切な資金配分戦略によって、そのための準備ができ、不確実性が増す中でもアジリティを高めることができるのです。
多角的に測定する。そして、繰り返す
CFOが組織とその優先事項を幅広く見渡し、主観的になりがちな選択肢について測定することは、ステークホルダーが決定事項をより正確に把握し、バイアスを軽減することに寄与します。しかし、測定とは必ずしも定量的に行われるとは限りません。複数の基準に基づいて意思決定を行うこと、より端的に言えば、異なった複数の視点から物事を見渡すことにより、企業のポートフォリオに適合する戦略、リスク、トレードオフと決定事項がを明らかにできます。
多大な投資のために
巨額の投資が必要な重大な意思決定は、時価総額が同程度の企業を買収することと同じくらい慎重に検討し、ガバナンスを機能させるに値するものであり、そのように対応すべきです。多大な投資を評価する際には、成熟度モデルを用いて組織を評価し、現在どのように意思決定を行っているか、投資に対する勝機を高めるためには既存プロセスをどのように効率化、強化し、新しいツールを導入できるかを考えましょう。
誰もが考えたくない質問をする
ずばり「私たちは間違っているのではないか」という質問です。この質問をすることなく資金計画の決定を行うべきではありません。財務上の意思決定を全体的に見ることは経理財務部門のリーダーであるあなたにかかっています。それはつまり、この意思決定が失敗であるという視点からの検討を意味します。ビジネス環境や市況は変化し、ステークホルダーの優先事項は変化します。
ポートフォリオを最適化するために
組織における日々の活動やキャッシュフローに影響する小規模な意思決定では、トレードオフを避けられない場合があります。発生するリスクや潜在的なメリットを正確に把握するには、バリューアーキテクチャを構築する必要があります。これは、財務、リスク、戦略上の課題をトップダウンで捉えたポートフォリオの一覧化であり、組織における優先事項を明確にし、潜在的なプロジェクトがどのようにその優先事項を高めていくかを示すものです。
チェックリスト
どの行程にもチェックリストが必要です。ここでは、資金配分の行程に対するチェックリストを用意しました。まずは以下を参考にして、自組織に応じた項目を追加しましょう。独自の工程には、独自のルールが必要です。
- 目標
企業として何をしたいのかを明確にした上で、データやインサイトに裏付けられた目標を設定し、それをステークホルダーに対して透明性のあるものにしましょう。 - データ
ステークホルダーと協力し、どんなデータやインサイトが必要か、どこから入手する必要があるか、そしてどのように入手するかを決定しましょう。 - ツール
ステークホルダーと協力して、各ビジネスユニットがどのようなデータを生成する必要があるのかを検討しましょう。 - 人材
組織内に適切な強みを持つチームを構築できていますか。チームは新たな手法で決定事項にアプローチできる多様な思考を備えているでしょうか。新しいアイデアを受け入れられるインクルーシブな環境を醸成していますか。そして、その過程でステークホルダーにどのように関与させていますか。 - 内容
組織のキャッシュフローを把握し、その変化によりもたらされる短期的、長期的なインパクトを分析しましょう。経営層のリスク選好度も把握しておきしょう。 - 計画
小さなことから始め、変革を徐々に浸透させましょう。時間をかけて行動や成果を記録し、ステークホルダーにもそのような記録を求めましょう。この記録は、他の意思決定においても有用なデータセットの基盤となります。最後に、自分の業務と同じように評価しましょう。
It's crunch time.(決断の時です)
資金配分は無数のステークホルダー、優先事項のトレードオフ、タイムラインが不確実なこと、などから究極の難題のように感じられるかもしれません。しかし、これはCFOにとって、周囲の人々が困難だと考えていることから可能性を見出すチャンスでもあります。そのチャンスをものにするには、案件の潜在的リスクや見込み価値に関して、深掘りした質問を投げかけて、ステークホルダーと双方向で対話をし、経営層を教育する必要があります。
これらの取組みは企業の組織成熟度にかかわらず、とても難しい要求です。しかしこの取組みによって、企業に新たな競争優位性を構築することができます。それには、目先の成功を積み重ねながら、将来起こりうることから目を離さないというものが重要です。
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