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Crunch time IV - 決断の時4
財務領域におけるブロックチェーン
ブロックチェーンの専門家たちとの議論の中で、あるCFOは首を横に振り、「これは途方もなくあいまいだ」と愚痴をこぼしました。簡潔な紹介事例から、財務領域におけるブロックチェーンについてCFOは何を認識しておくべきなのか、デロイトの見解を紹介していきます。
財務領域におけるブロックチェーンに関してCFOが認識すべき事柄
ブロックチェーンはデジタル資産をほぼリアルタイムで処理・取引できる分散型台帳技術(DLT)です。保存される記録は恒久的かつ不可逆的です。
ブロックチェーンには主要な利用方法が2点あります。1点目の用途は、ビットコインのような仮想通貨の取引や管理に関連するものです。2点目の用途は、貿易や商業に関する取引(買掛金、売掛金等の財務プロセス)を管理するものです。私たちはこの用途をビジネスブロックチェーンと定義しています。
CFOは両方の用途について理解を深めるべきですが、今回は、ビジネスブロックチェーンとその財務運用における可能性を中心に紹介します。
ビジネスブロックチェーン
ビジネスブロックチェーンはトランザクション管理のあり方を刷新するために活用されており、あらゆるプロセスの時間やコストを減らすことができ、ほぼリアルタイムの運用が可能になります。また、正確性や統制の面でも優れた成果をもたらし、これまでの多くの手法と比べてリスクをはるかに低く抑えられます。
とはいえ、ブロックチェーンは新しく登場した技術です。まだ誰も全部をうまく纏め切れているわけではありません。皆さんが自らの選択肢を模索する時間はまだ多く残っています。
ブロックチェーンの可能性評価
ビジネスブロックチェーンは単体でのソリューションとしても運用可能ですが、より包括的なプロセスを再構築する目的として、自動化や人工知能(AI)など、ほかの技術と組み合わせた場合に、その実現価値を大幅に増大させることができます。
ブロックチェーンが自社の抱える課題に対して有効かどうかは、「適合性要素」の数によって決まります。
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ブロックチェーンが財務に与える効果
ブロックチェーンの財務向けアプリケーションは、いかなるトランザクション処理においても適用可能と言って良いでしょう。世界中の企業で下記のような事例の実証実験や実用化検討が進められています。
- 売掛金や買掛金の補助元帳の自動検証
- グループ会社間取引や連結処理
- 販売管理(OTC)と購買管理(P2P)の統合
- 収益サイクル管理
- ファイナンス取引
ブロックチェーン以外の選択肢
ブロックチェーンの導入は、ほかの技術が真似しにくいため急速に進められています。それでもなお、ブロックチェーンがすべてのニーズにとって適切なソリューションになるとは言えません。多くの企業では、コグニティブツールによって拡張されたERPシステムにより、多くのトランザクション処理に関する要求をカバーすることができます。
今日におけるブロックチェーンの捉え方
ブロックチェーンは時として途方もなくあいまいな目標のようにも思えます。そのため、どのように技術が動くのかを懸念するのではなく、事業上の適用性を評価するための実証実験を見極めることに注力しましょう。実用化することが理解を進める最善策になります。
ビジネスブロックチェーンの導入は、あらゆる領域に大きな影響を及ぼすでしょう。あまりにメリットが多く、無視できない存在だからです。ブロックチェーンが主流になるまで、それほど長くはかからないでしょう。今後5年で一般的に利用される技術となり、企業が業務改善やリスク管理に用いるほかのソリューションと共に導入されるようになる可能性が高いです。
CFO向けブロックチェーンチェックリスト
ブロックチェーンを始める場合は小規模に始め、適用する規模を拡大していきましょう。
- 懐疑派と熱心な支持派の両サイドを網羅した資料リストを作成。最新状況をフォローします。
- チームを編成し、財務分野におけるブロックチェーンの動向をキャッチアップします。チームには技術とビジネス、両方の知見を持つ人材をアサインします。
- 業界をリードする人々の行動をモニターします。
- 幾人かの主要な取引先関係者と会い、ブロックチェーンの可能性に関する考えを探ります。
- 最高リスク責任者(CRO)がブロックチェーンに関連する法令順守に係る問題への対応で確実に遅れが生じないよう、動向をモニターします。
- ブロックチェーンによる効率性が見込まれる明示的な適用箇所をいくつか特定します。各々について事業上の妥当性を検証します。
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