調査レポート

Crunch time VII - 決断の時7

デジタル世界のレポーティング

現在、多くの経理財務部門は資料作成に多くの時間を割いています。しかし、将来の経理財務の、レポーティングの世界ではRPA、チャットボット・AI等の活用によって様変わりし、より付加価値の高い仕事に時間を振り分けられるようになります。どのような変化があるのか、一緒に確認していきましょう。

従来のレポーティングとデジタル社会でのレポーティング

『これまでと同じことを繰り返している限り、これまで以上の成果は得られない』。そう、経理財務部門は資料作成に多くの時間を割いていますが、それは決まりきったフォームに埋めるべき数字を収集し、加工する時間が大部分です。

レポーティングが語られるとき、カタリストの役割としてインサイトを提示する能力の向上も合わせて語られますが、多くの経理財務部門は定型的な資料での報告に留まっており、インサイトまで分析・提示できていないのが現実です。

将来の財務経理におけるレポーティングの世界は、より付加価値の高い仕事に時間を使えるよう、RPA、チャットボット・AI、アナリティクス、ダッシュボードの活用によって、今までのレポーティングとは様変わりします。

Crunch Time VII - 決断の時7〔PDF,785KB〕

レポーティングの慣習

従来のレポーティングでは、バインダーいっぱいに綴じられた書類の束、図表をまとめるために何週間もの時間を費やしている経理・財務部門のスタッフが大勢います。理想的な環境であれば、変化するビジネスニーズに合わせたレポートが作成されるべきですが、実際にはそうなることはほとんどありません。

デロイトが実施したインタビューによると、インタービュー対象者の4分の3は、より効率的に、より速くインサイトを得る方法として集中化を行っていました。集中化するだけで、パフォーマンスをそれほど劇的に改善することができるのであれば、レポート作成に自動化や高度な分析技術、機械学習のようなデジタルツールを加えることで、よりインサイトのあるレポートをより速く、より低コストで作成することができるようになります。

変化の兆候

今日、企業では特定分野のパフォーマンス向上をサポートするために、従来のレポーティングプロセスに対して部分的に施策を適用しています。例えば、スマートデバイスやスマートアシスタントにより業績に関して対応していたり、チャットボットにより一般的な質問に答えられるようにしている企業もあります。また、基本的な経理・財務情報に関する分析を、人間を介さず作成するために、AIを活用している企業もあります。さらに、月次より短いサイクルでの締め処理により、リアルタイムで情報参照が可能となっている企業もあります。

これらのことは、絵に描いた餅でありません。すべて可能なことであり、現実になり始めています。

レポーティングの未来

未来にまで話を進めましょう。5年後のレポーティングはどうなっているのでしょうか。 リーディングカンパニーの5年後の現場の様子を具体的に見てみましょう。
将来のレポーティング方法を変える重要な特性が3つあります。レポーティングは、“インテリジェント”で、“インタラクティブ”、そして”リアルタイム”となります。

<インテリジェント>

機械学習、チャットボット、自然言語ツールなどのAIにより、ユーザーが望むものを知ることによって、顧客満足度を向上させるものがあります。また、単調で大変なレポーティング作業の一部を代わりに実施するものもあります。レポートの作成(少なくともドラフト)に人間が関わることはなくなるでしょう。

<インタラクティブ>

将来のレポーティングにおける大きな変革の一つは、読み手が報告された情報にどのように関わるかという点です。経理・財務部門の顧客である社員は、紙面上の固定化されたデータを使うのではなく、タブレットと電話を使って自身のペースで、また自身が好む方法で情報を取捨選択するでしょう。

<リアルタイム>

レポーティングプロセスのすべてが自動化および合理化されれば、リアルタイムのレポーティングが可能になります。現在、それを現実のものにする際に、データ品質と待ち時間の発生(すなわち、タイムリーではないこと)が大きな障壁になっています。幸いにも、近い未来ではレポーティングの活用を望む企業にとって、リアルタイムは非常に期待できるものになっています。

将来のレポーティング

将来の財務レポーティングでは、ERPシステムと連携したチャットボットを活用される

今後に向けて

レポーティングプロセスは、変革不可能であるかのように思われることがあります。変革には時間がかかります。また、役員、取締役会、社外投資家の全員が利害関係にあるため、レポーティングプロセスの変革に向けたあらゆる取り組みに抵抗を感じることがあるかもしれません。新しい取り組みの優位性と信頼性を証明できるようになるまでに、おそらくそれほど長い時間はかからないでしょう。そのため、近いうちに、レポーティングの変革をほぼ確実に経験することになるでしょう。早めの準備と調査が重要です。

最後に

過去のレポーティングでは、データを収集し、レポートを構成し、配布するという、レポート自体を作成するために必要とされるステップが特徴でしたが、それは変化しています。デジタルの世界では、ダッシュボードとデジタル技術がレポーティングの多くの作業を担うため、人間はより付加価値の高い仕事に時間を使えます。

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