Industry Solutions | オファリングサービス
ブロックチェーンで、アフリカ児童労働問題の解決を目指す
社会課題をテクノロジーで解決し、多様なステークホルダーとのコレクティブ・インパクト・アプローチをリードする
本プロジェクトの狙いや背景等
世界の子どもの10人に1人が従事する児童労働。アフリカ地域では子どもの5 人に1 人が児童労働に従事しているといわれており、中でもチョコレートの原料であるカカオ農園における児童労働者数は増加傾向にあります。
しかし企業も消費者も、原料の調達元であるカカオ農家の現状をこれまで把握できていませんでした。
サプライチェーンにおける人権問題は企業の責任、という認識が当たり前となった今、原料調達先の状況を正しく把握し、問題の是正に取り組むことが必須となっています。
本プロジェクトでは、世界最大のカカオ豆生産国であるコートジボワールで、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティシステムの構築に向けた実証実験を行いました。
カカオ農園における児童労働の現状を正しく情報入力してもらえるよう参加者のインセンティブを設計し、かつ児童労働問題の解決に向けて重要な役割を果たす学校の協力を得て、通学の状況を正しく把握できる仕組みにしました。
欧米のカカオ関連企業が運用する、児童労働に関する情報を収集する既存システムは複数ありますが、児童の学校出席情報を確認し教育を促す仕組みは、グローバルで見ても画期的な仕組みとなっています。
プロジェクトにかかわるメンバー及びそれぞれの役割について
本プロジェクトは、JICA(独立行政法人国際協力機構)の公募案件であり、デロイトからはデロイト トーマツ コンサルティング(DTC)、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(DTFA)、デロイト コートジボワールが参画し、加えてブロックチェーンソリューションを提供するDLT Labs社との共同で、プロジェクトを推進しました。現地での実証実験を進めるにあたっては、カカオ農園を管理している商社、カカオ農家、農協、児童労働モニタリングチームの方々にご協力をいただきました。
プロジェクトでは、児童労働撤廃というゴールに少しでも近づくための仕組みづくりを検討すべく、まずは現状を把握するために多様なステークホルダーへのヒアリング、消費者調査を行い、最適な施策を検討しました。そしてブロックチェーンシステムの設計、要件定義、ステークホルダーのインセンティブ設計等を含め、様々な関係者との協議を行い、実証実験の実施と結果の検証を行いました。
プロジェクトを成功させる上でのポイントやプロセスについて
児童労働問題は主に農家の低収入が原因であり、その背景には企業による低コストでの原料調達、消費者の低価格志向、児童労働問題への意識欠如が挙げられます。このように複雑な要因が絡み合っているため、まずはシステム思考のアプローチで問題の全体像を捉え、様々な要素とのつながりを把握したうえで、最も効果的な解決に向けたアプローチを議論しました。
そのうえで、本プロジェクトでできること、できないことを見極めていきました。ブロックチェーンを活用したトレーサビリティシステムの構築は、問題解決に向けた一つの手段ではあるものの、システム導入のみで問題が解決することではない、ということを共通の認識としたうえで、可能な範囲で最大の効果を生み出す仕組みを検討していきました。
本システムは、児童労働によらないカカオの調達を目指す企業が、まずは現地の情報を正しく把握することを目的として設計されました。正しい現状把握により適切な是正策を打ち出すことが可能となるからです。具体的には、現地の農家リーダー、学校の先生、児童労働モニタリングチームの方々に、子どもの労働状況、児童の学校出席状況等の情報をタブレットで入力していただきました。
通常ブロックチェーンシステムの運用に向けては、参加者に対するインセンティブ設計が大変重要となります。そこで参加者の入力作業に対して報酬を付与する仕組みを設計しました。
しかし実際にシステムを運用して分かったことは、実はインセンティブがなくても仕組みは機能する可能性が高い、ということでした。
実証実験の対象地域は、児童労働問題に関する意識付けの取り組みが進んでいる地域であったため、現地の方々も児童労働をなくしたい、子どもを学校に通わせたいという強い想いがありました。
仮にインセンティブ付与を前提とすると、万が一付与がストップした際、その時点で取り組みが止まる恐れがあります。
よって本プロジェクト終了後に本格運用をする場合は、その点を参考にし、システム運用のためのインセンティブよりも、カカオ豆の代金をより高値で買い取ることに重きを置いて、農家収入向上に直結させることが重要と考えています。
本案件ならではの難しさややりがい
正解のない世界で、課題解決に向けて、前例がないからやらないではなく、前例がないからやる、というマインドで取り組みました。
児童労働問題を解決したいという共通の目的を持ったプロジェクトメンバーとは、日々熱量高く、活発な議論を行ってきました。
また情報収集を徹底的に行い、情報をロジカルに整理・分析し、前に進めるために冷静に議論を進めてきました。
コロナ禍で、3回予定されていた渡航が1回となりましたが、デロイト コートジボワールのメンバーが何度も現地に赴き、現場をくまなく調査してくれました。この点は、グローバルファームならではの強みを改めて実感しました。
実際に企業へヒアリングすると必ず出てくるのがコスト負担の問題です。
企業にとって、児童労働問題は取り組むべきであると認識しつつも、コストとの兼ね合いでそう簡単には導入できないという問題に直面します。本案件はJICAのプロジェクトとして実証実験の位置づけでしたが、プロジェクト終了後も、費用対効果のバランスを調整したうえで実運用可能な仕組みに昇華させ、企業と協働していくことが決まっています。
本案件における、DTCならでは、または、Divisionならではの取り組み
デロイトは、企業・NGO/NPO・行政など、組織の壁を越えた社会課題解決アプローチの推進を進めています。特にグローバルなサプライチェーンにおける課題を解決するには、単独のプレイヤーだけでは解決不可能です。本プロジェクトのように、消費国・生産国における様々なステークホルダーとの議論を通じて、「コレクティブインパクト」による社会課題解決をリードすることができる、それがデロイトの強みです。
デロイト トーマツ コンサルティングのCBOは、Smart X Labというイニシアチブをリードしており、ブロックチェーン、アジャイル開発、スマートシティー、ペイメント、人権問題等の専門家が集まっています。私たちは、社会課題の解決に向けて、テクノロジーの活用を通して日々様々なアジェンダに取り組んでいます。
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